ぼくの映画評のぼうよみ

映画の感想を書き散らしてるだけ。

根本的に間違っている。~『シャーク・イン・ベニス』

水の都ヴェネチアを舞台に、ジャンプして岸辺の人間まで食い殺す躍動感あふれるホオジロザメと運河の潜水調査中に失踪した父を捜す海洋学者のカップル、ヴェネチアの地下に眠るというメディチ家の秘宝を狙うマフィア、そしてヴェネチア警察の三つ巴、四つ巴の戦いが繰り広げられるモンスターパニック映画。

個人的にはダヴィンチ・コードのヒットを見てサメ映画界が「よっしゃ、ワイもイタリアを舞台に歴史ミステリっぽい映画撮ったろ!」と欲をかいて企画した映画じゃないかと思っているが、運河の内部から続く地下迷路にはスイッチを踏むと壁から槍が飛び出す仕掛けなどベタなトラップが盛りだくさんで、ダヴィンチ・コードというよりは劣化版インディ・ジョーンズ風の仕上がり。

襲いくるサメ、マフィアに追われるアクション、迷宮の冒険、歴史のベールに包まれた秘宝、マフィアと警察の銃撃戦、そして風情あふれる水の都ヴェネチアと、ロマンを感じるギミックを無秩序に詰め込んだ感がすごい。そしてみごとにみんな中途半端。

肝心のサメの襲撃シーンは細切れなカットと水中に漂う血煙のせいで不明瞭だし、サメがクリアに映っているシーンはおそらく他からの流用映像だろう。しかもサメが迫ってくるシーンは同じ映像の繰り返しで、思わず漫☆画太郎かとツッコみたくなる。

人間同士のアクションシーンも全体的に地味でしみったれていて、マフィアのバイク乗りがムダにがんばってウィリーするシーンだけが悪目立ちする。

まあシナリオやアクションの安っぽさはどうでもよくて、そもそもこの映画が根本的に間違っているのは、メディチ家の拠点はヴェネチアではなくフィレンツェだということだ。

脚本の段階で誰もツッコまなかったのだろうか…。

メディチ家の兄弟が十字軍に参加してビザンツ帝国から略奪してきた財宝をヴェネチアに持ち帰った、という設定なので、ヴェネチアが十字軍の際にビザンツ帝国で略奪を働いた史実を踏まえているのだろう。それくらいの知識があるのなら間違いには気づいているはずだが、まあ、メディチ家が一番有名だしそれでいいじゃん!というノリなのだろう。これがラテンか。

 

 

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