ぼくの映画評のぼうよみ

映画の感想を書き散らしてるだけ。

荒野のハンディキャップドヒーロー~『ハチェット無頼』

片腕ドラゴン然り、座頭市然り、ハンディキャップドヒーローには男子を燃えさせる何かがあるようで、最近僕がハマった『百人の半蔵』も主人公が隻眼だったりする(しかもその潰れている方の目に釘を刺して戦う!)。

タランティーノロバート・ロドリゲスも好んだように、時代劇やカンフー映画などアジアの映画ヒーローには時々そういったヒーローが登場するが、欧米の映画には上記のインスパイア組以外ではいないのかというと、実は西部劇にもハンディキャップドヒーローは存在する。

それがマカロニ・ウェスタン後期の傑作といわれる『ハチェット無頼』(’77 イタリア)である。

斧が得物の賞金稼ぎ「マンナーヤ」(イタリア語で「斧」の意)は、立ち寄った鉱山町で鉱山の幹部ボレルをカード賭博で破り、恨みを買ってしまう。鉱山主マッゴーワンの娘を狂言誘拐したボレルの罠にはまった「マンナーヤ」は、瞼を釘で留められ直射日光にさらされ両目を潰されるが、洞窟に潜み石を磨いて手斧をつくり、復讐を果たそうとする、というストーリー。

冒頭からの煽情的なテーマ曲、泥まみれのアクションと『続・荒野の用心棒』を彷彿とさせる作風で、「マンナーヤ」の投げた手斧で賞金首の手首が斬り飛ばされたりと暴力描写もしっかりしている。

マッゴーワンの娘が乗る駅馬車が襲撃されるシーンでは、鉱山町でのフレンチ・カンカン(?)の巡業で盛り上がっているシーンと逐一画面を切り替えて同時進行し、音楽はカンカンを流し続けるという、『ゴッド・ファーザー』のような演出でしびれる。ほかにもマッゴーワン家の荷馬車を敵対するドルマン一味が強奪するシーンでは、ドルマン一味の者が自分の馬から荷馬車の馬へ、走行中に飛び乗る曲芸めいたアクションを見せてくれ、「モンゴル兵ってこうやって替え馬に乗ったのか…」と映画の内容と関係ない感慨を抱いたり。

また、スラリとした長身のダンディーで常に二頭のド―ベルマンを従えるボレルや、車椅子に乗った老権力者マッゴーワンなど、敵キャラもなかなか立っているが、それ以上にやはり盲目の手斧使いという他では聞いたことのない「マンナーヤ」の異色すぎるキャラが良い。しかし目を潰されてからあまり訓練していないはずなのにスイスイ手斧を命中させすぎだろ…。

ツッコみどころはあれどハンディキャップドヒーローとしての様式美、さんざん痛めつけられた後の復讐のカタルシスと、泥まみれなのに観ていて爽快な佳作である。

ところで『百人の半蔵』の主人公の目の釘って、この作品の影響じゃないよね…?

 

 

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