ぼくの映画評のぼうよみ

映画の感想を書き散らしてるだけ。

ピースでポップな不適応忍者の遊園地デート~『RED SHADOW 赤影』

『SF サムライフィクション』の中野裕之が今度は忍者を主役に、またしてもピースでポップな時代劇映画を撮った!

 

…と煽られても、天下泰平の江戸時代が舞台だった『SF』ならば厭戦家の侍も違和感なく受け入れられるが、ときは大小の大名や忍者勢力が麻のごとく入り乱れる戦国時代。傭兵稼業の忍者が平和主義なんて嫌な予感しかしないぜ、と思いながらも麻生久美子見たさに鑑賞。結果的にいえば、僕の嫌な予感は半分あたって、半分はずれた。

 

戦国時代の近江を舞台に、野心家の津川雅彦ひきいる東郷家と、老当主が没し孫娘である若き女城主のオキメグをいただく京極家の争いを背景に、両家に仕える忍者軍団の暗闘を描く時代劇。横山光輝の『仮面の忍者赤影』が原作ということだが、未読のため比較はできない。 

主役たる東郷家の影軍団は、身体能力は抜群なのに人を殺すことを嫌う赤影(安藤政信)、粗忽者で女にだらしなく、人を殺しただけで動揺する青影(村上淳)、セクシーなミニスカ網タイツ姿を披露してくれるが、くノ一として必須な「敵忍者からの辱め」というイベントをこなすこともなく死んでしまう飛鳥(麻生久美子)と、およそ忍者としての適性に欠く頼りないメンツ。ボスの白影もいつもどおりの高低差テンションで個性派をきどる竹中直人の平常運転だ。

対する敵側、京極家に仕える根来忍者も、藤井フミヤ扮する乱丸以外は青影に輪をかけたような失敗続きのドジでマヌケな三下ばかり。敵城への侵入では一番活躍した飛鳥も、その三下の一人に斬られてあえなく最期をとげるし、なんというか忍者映画なのに登場する忍者がほぼ全員だらしない。

アクションについてもスーパーナチュラルな忍術合戦はなく、バク転したり手裏剣を投げあうだけで、リアルといえばリアルだが、ポップな映画を目指すならもうちょっと工夫があってもよかったんじゃないか。

現代的な台詞回しやゴリッとしたロックなBGMは監督の作風として承知のうえで観ているのであまり気にならないし、さすがに映像は悪くないが、あまりにも忍者失格な面々と盛り上がりに欠けるアクションとストーリー展開、上滑りするぬるいギャグでポップさを打ち出す演出と、欠点ばかりが悪目立ちしてしまうのはいかんともしがたい。

 

ただ、そんな本作にも 魅力はあって、それが二人の女優、前半のヒロイン麻生久美子と、後半のヒロイン奥菜恵である。

麻生久美子扮する飛鳥は赤影青影の幼なじみであり、身軽さをいかした敵城への侵入やネズミの鳴きまねが得意なくノ一だが、唇をすぼめていたずらっ子のような表情でチュッチュッと鳴く彼女の可愛いことといったら!

ミニスカ網タイツという映画的に正しいくノ一スタイルでスレンダーボディを存分に魅せつけてくれるのも眼福。とくにミニスカをまくり上げて男の視線を誘った隙に金的を蹴り上げる油断大敵の術はなんかもう、好きなだけ蹴り上げてくれ!っていいたくなるよね。

マンガやゲームでよく見るようなトラップだらけの京極城への潜入では、赤影は彼女とシーソーに乗ってキャーキャー騒いだりして、楽しそうだなお前ら!アトラクションか!と、罠にかかっているのに逆にうらやましくなる。

そもそも京極城へ向かう道中から赤影と飛鳥は馬にべったり2人乗りしてデート気分か!お前ら、たまには青影のことも思い出してあげてください…。

そんなキュートな彼女は、赤影と相思相愛ながらも任務中に非業の死を遂げてしまう、ありがちな役どころなのだが、この忍者映画のくせに異常に人死にの少ない作品で敵のモブ忍者の凶刃に倒れるという運の悪さというかドジっ娘ぷりにはわたくし涙を禁じ得ません。京極城への潜入では一番役に立っていたのに、赤影と乱丸の手裏剣合戦を、サッカーで活躍する彼氏を応援する女子みたいなノリでながめてたり(さっさと逃げろよ!)、赤影のピンチに身をさらしたり、やはりくノ一である前に女だったのか、と悲しいようなホッとするような。

後半のヒロイン、赤影がスパイする京極家の新女当主のオキメグは父母や祖父が亡くなり、男として生きていくことを志す気丈な姫として描かれるのだが、セリフが棒読みすぎて唖然となる。

しかしこの棒読み具合がなぜだか彼女の天真爛漫さを強調する効果があり、謎の魅力を発揮している。赤影の本名を知り、連呼するさまが無邪気で可愛い。

また、オキメグが山で山賊に囲まれ、乗馬鞭で敵の尻を打擲するシーンがあるのだが、もう何このプレイ!?そりゃ山賊もニッコリ笑顔だよ!!

 

ともあれ時代劇映画、忍者映画としてはお寒い出来の本作だが、ヒロインだけは可愛く撮れていて、もう美女2人とキャッキャウフフする安藤政信がうらやましい!(血の涙)

そういえば『SF』でも年甲斐もなく緒川たまきが可愛かったなあと思い出した。もしかしたら中野裕之は女優を可愛く描くことだけは上手い監督なのかもしれない。

 

 

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